ラスト・ジョーカー
異形である自分にそんな存在ができることはおそらくないと、わかっている。
けれど、そんな誰かがいればきっと、世界一幸せになれるのに。
ふと思いついて、エルは麻由良に尋ねてみた。
「麻由良さんにはあるんですか? 麻由良さんの唯一」
問われた麻由良はニヤリと笑って、まっすぐ前を指差した。
「私の唯一はそこにいるよ」
たき火の炎を超えて麻由良の指差すほうに見えるのは、砂漠モウセンゴケの骸と、その周りで遊ぶ子供達。
「もしかして、ミオちゃん?」
エルが言うと、麻由良はにっこりと笑って頷いた。
そして立ち上がると、「おーい、ミオ! こっちおいで!」と、手を振りながら大声で叫んだ。
呼ばれたミオはすぐに駆けてくると、麻由良の腰に飛びついた。
麻由良は「おっと」と言いながらそれを受け止め、笑顔でミオを抱き上げる。
「この子が、私の唯一だ。世界で一番愛してる」
麻由良はそう言って、ミオに頬ずりをした。
それにミオはくすぐったように笑って言う。
「ミオも、ママがせかいでいちばんだいすきだよ!」
微笑ましい光景に、エルも自然と笑顔がこぼれた。