ラスト・ジョーカー

*第四章 きみが呼ぶ名前 2*


 結局その後、安心したら眠くなってしまったエルは検問の間中箱の中で眠り続け、

「エルちゃんさん、起きてー」というアレンの声に起こされたときには、〈ハナブサ〉の安宿の一室にいた。



「おまえ、寝すぎ」



 むくりと起き上がったエルに対する、ゼンの第一声がそれだった。


窓の外を見ると、もう空が暗くなり始めている。


ゼンの言うとおり、思ったよりも長いこと寝ていたようだ。



「気持ち良さそうに寝てたから、このまま寝かしとこうかとも思ったんだけどねー。麻由良さんが晩ご飯に呼んでるから」



 言われてみれば、なんだか階下が騒がしい。


食べ物の美味しそうな匂いもする。



 ゼンとアレンと連れ立って階下に降りると、宿屋の食堂の半分を隊商の者たちが埋めつくしていた。



「あ、エル! こっちいらっしゃい」



 皆の中心に座った麻由良に招かれるままに、エルも空いた席に座った。


その右にゼン、左にアレンが座る。



 食卓には、これまでの旅の生活では考えられなかったような豪勢な食事が並んでいた。



「ずいぶん豪華ね。なにかあったの?」



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