ラスト・ジョーカー



 その目を見ているうちに、言葉が自然と口からすべり出た。



「……ごめんなさい」



 エルはどこか泣きそうな顔をして、ゼンに笑いかけた。



「それから、ありがとう。ミオちゃんへのプレゼントのことも、さっき助けてくれたことも」



 エルは隣にいるアレンを見て、「アレンも、ありがとう」と笑う。



 アレンはへらっと笑って、「おれ、なんもしてないけどねー」と言った。



「ううん。そんなことない。あの男に連れていかれそうになったときアレンの声がして、すごくほっとしたもの」



「そう? ならよかった」



 アレンが気の抜けたような笑みを浮かべた。


そのとき、ギイ、とドアの開く音がした。



「エル、今外でなにかあったのか?」



 心配そうに眉をひそめた麻由良が、食堂の扉を開けて玄関に現れたのだ。


その足元には、不安げな顔のミオもいる。



 エルは慌てて首を横に振った。



「いえ、なんでもないんです。ちょっと酔っ払いに絡まれて……。でも、ゼンとアレンが助けてくれました」



 そう言うと、麻由良はほっとしたように胸をなで下ろした。


足元のミオが「ゼンおにいちゃん、すごいねぇ!」と言って、明るく笑う。



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