ラスト・ジョーカー
アレンはそれを受け取ると、ポケットから真新しい革紐を取り出して、鈴についた穴にそれを通す。
そして紐を適当な位置で結ぶと、「はい」と言ってエルに返した。
その紐は、ちょうど頭が通る程度の輪を作る。
「そんな小さいもの、ポケットに入れてたら落としても気づかないだろうなって思って」
言われて、エルは試しにそれを首に下げてみた。
鈴はちょうど胸の下あたりにぶら下がって、りん、と音を立てる。
「まあ、首にかけるのが嫌ならその紐適当に切ってくれていいし」
照れ笑いで言うアレンに、エルは首がちぎれそうなほどぶんぶんと首を振った。
「嫌じゃないよ! ぜんぜん! ……アレン、ありがとう」
心底嬉しそうに頬を紅潮させて言うエルに、アレンも笑みを深くした。
――その眉尻が困ったように下げられたのを、エルは一瞬見た気がしたのだけれど。
「まあ、せめて…………ね」
宴の喧騒で聞きとれなかったアレンの言葉を、困ったような笑みの理由を、
――アレンが次の瞬間にはいつものようにへにゃへにゃした笑みを浮かべていたから、エルはなんとなく、尋ねることができなかった。