ラスト・ジョーカー



 だが、ゼンが一同の前でサイコメトリ――透視をして誘拐犯が昨夜エルをさらおうとした男だとわかると、まともな話し合いなどできるわけもなかった。


まずガランが「その化け物のせいだ」とエルを非難し、隊商の一同がそれに賛同し、――今に至る。



「こんな化け物、やっぱり隊商に引き入れたのが間違いだったんだ!」



 バンッ、とテーブルを叩いてガランが言う。


「ガラン、待て」と止めようとする麻由良の言葉も耳に入らないほど怒り狂った他の者たちも、「そうだそうだ!」「化け物め!」とエルに言葉のつぶてを投げた。



 エルは反論できずにうつむいた。

彼らの非難が、まぎれもなくまっとうなものだったからだ。

――ミオのことは、エルの責任以外の何物でもない。



 奇異の目で見られることも、金儲けの道具として扱われることも、エルにはよくある話だ。


一度だけ見世物小屋を脱走したときだって、あやうく研究者に売られそうになった。



 そんなエルだから、ゼンとともに旅に出てからの数日間は、エルにとって暖かすぎる日々だった。



 それはたった数日のことだったのに、いつの間にかエルはそれに慣れてしまったのかもしれない。



< 143 / 260 >

この作品をシェア

pagetop