ラスト・ジョーカー
自分の価値がどれほどで、自分を狙う者が何をしでかすのか。
それを、予測することができなくなっていたのだ。
どうして、あの男があれで諦めると思っていたのだろう。
どうして、隊商の者が巻き込まれる可能性を考えなかったのだろう。
――悔やんでも、悔やみきれるはずもなく。
「麻由良さん」
うつむいたままのエルが言った。
「ミオちゃんが昨日着ていた服は、もう洗ってしまいましたか」
予想だにしなかった問いに、一同が訝しげな顔をした。
「え……。いや、まだ」
「じゃあ、一枚持ってきてください」
エルが言うと、麻由良は眉をひそめたまま立ち上がって、慌てたように部屋を出ていった。
「おい、化け物」
麻由良の背を見送って、ガランが言う。
「どういうつもりだ」
「ミオちゃんの匂いが強く残っているものがあれば、匂いを辿って誘拐犯が今いる場所がわかるかもしれない。……化け物だから、鼻が利くの」
「誘拐犯の居場所をつきとめて、どうする」
「決まってる。ミオちゃんを返してもらう」
即答したエルを、ガランは鋭い目で睨みつけた。
「ミオはおれたちで助ける。化け物の手は借りない」