ラスト・ジョーカー
4
*第四章 きみが呼ぶ名前 4*
赤い塔の周りの森を抜けて、ゼンのPKで展望台に登り、ガラスのはまっていない窓から中へ転がり込むと、エルの嗅覚が示した通り、そこにはミオと誘拐犯の男がいた。
唐突に現れたエルたちを男は呆然としたように見ていたが、ミオが泣きじゃくりながら「おかあさん!」と麻由良を呼ぶ声を聞いて、慌ててミオを引き寄せた。
「その子を返して」
エルが低く言う声に「うるせぇ!」と返して、男はミオを抱えてじりじりと後退していく。
男が向かう先は、壁が崩れ落ちてむき出しの空から冷たい風が吹き込んでいた。
その縁ぎりぎりで男は止まった。
そこから一歩でも後ずされば、男もミオも諸共に落ちてしまう。
「誰か一歩でもそこから動けば、このガキをここから落とす」
男が言った。
麻由良もガランも青ざめた顔で動きを止めたが、エルは顔色一つ変えずに男を見ていた。
男がミオを落とそうとすることは怖くない。ゼンがPKで止められるからだ。
エルが目配せすると、ゼンはエルの意図を了解したように小さく頷いた。
ミオのことは任せろ。好きに動け。
赤い塔の周りの森を抜けて、ゼンのPKで展望台に登り、ガラスのはまっていない窓から中へ転がり込むと、エルの嗅覚が示した通り、そこにはミオと誘拐犯の男がいた。
唐突に現れたエルたちを男は呆然としたように見ていたが、ミオが泣きじゃくりながら「おかあさん!」と麻由良を呼ぶ声を聞いて、慌ててミオを引き寄せた。
「その子を返して」
エルが低く言う声に「うるせぇ!」と返して、男はミオを抱えてじりじりと後退していく。
男が向かう先は、壁が崩れ落ちてむき出しの空から冷たい風が吹き込んでいた。
その縁ぎりぎりで男は止まった。
そこから一歩でも後ずされば、男もミオも諸共に落ちてしまう。
「誰か一歩でもそこから動けば、このガキをここから落とす」
男が言った。
麻由良もガランも青ざめた顔で動きを止めたが、エルは顔色一つ変えずに男を見ていた。
男がミオを落とそうとすることは怖くない。ゼンがPKで止められるからだ。
エルが目配せすると、ゼンはエルの意図を了解したように小さく頷いた。
ミオのことは任せろ。好きに動け。