ラスト・ジョーカー
ゼンの目がそう言っているように、エルには見えた。
エルも小さく頷き返して、男めがけて走り出そうとする――が。
「そこのガキはサイキックか」
男がゼンを指差して言った。
「おまえらがここまで登ってくるときに、そのガキの周りが青く光ってるのを見た。そのガキがPKで運んだんだろ」
エルがピタリと動きを止めると、男はにやりと笑って懐から紙きれを取り出し、足下の床に貼り付けた。
すると、その紙がほんの一瞬だけ青く輝いた。
それを見たゼンが「しまった」と小さく呟いた。
「どうしたの。あれは何?」
小声で尋ねるエルに、「魔除け……みたいなものだ。これでこの空間ではPKを使えなくなった」と、ゼンは答えた。
「そんな……」
「くそっ、どうやって手に入れたんだ。あれは〈トランプ〉だけが……」
ぶつぶつと言い続けるゼンに構わず、男は今度はエルの足下になにかを投げてよこす。
「なに……手錠?」
「異形の両手首にそれをかけてこっちによこせ。異形と引き換えにガキを返す」