ラスト・ジョーカー
5
*第四章 きみが呼ぶ名前 5*
〈トランプ〉エリア〈ハナブサ〉支部内、地下。
真っ暗で長い廊下を、燃えるような赤い髪をなびかせながら、ウォルター・アシュクロフトは歩いていた。
足下すら見えない真っ暗闇の中を歩く彼の足取りに、迷いはない。
しかしその後ろをついて歩く赤ら顔の男は、暗闇を恐れるように身を縮こまらせていた。
歩くたびに、男の両手首にかけられた手錠の鎖がカチャカチャと鳴る。
「なあ、どこ行くんだよ。なんでここ、電気つけないんだよ」
男が前を行くウォルターに尋ねた。
「電気は通ってないんだ」
男の後の質問にだけ答えて、ウォルターはずんずんと前へ進む。
だが男は質問を重ねたりはしなかった。どこに行くのかなど、予想はつく。
なにしろ男は誘拐犯だ。牢屋入りに決まっている。
しかし、予想はできていても、おとなしく牢に入る覚悟は男にはなかった。
「おい、あんた!」
喉の奥に痰のからんだ声で、男は再度ウォルターを呼んだ。
足を止めず、振り向きもせず、ウォルターは「なに? 誘拐犯さん」と尋ねる。
「俺を牢にぶち込む前に、やることがあるだろ!」
「んー、なにかなあ? ぼく、思いつかないんだけど」
〈トランプ〉エリア〈ハナブサ〉支部内、地下。
真っ暗で長い廊下を、燃えるような赤い髪をなびかせながら、ウォルター・アシュクロフトは歩いていた。
足下すら見えない真っ暗闇の中を歩く彼の足取りに、迷いはない。
しかしその後ろをついて歩く赤ら顔の男は、暗闇を恐れるように身を縮こまらせていた。
歩くたびに、男の両手首にかけられた手錠の鎖がカチャカチャと鳴る。
「なあ、どこ行くんだよ。なんでここ、電気つけないんだよ」
男が前を行くウォルターに尋ねた。
「電気は通ってないんだ」
男の後の質問にだけ答えて、ウォルターはずんずんと前へ進む。
だが男は質問を重ねたりはしなかった。どこに行くのかなど、予想はつく。
なにしろ男は誘拐犯だ。牢屋入りに決まっている。
しかし、予想はできていても、おとなしく牢に入る覚悟は男にはなかった。
「おい、あんた!」
喉の奥に痰のからんだ声で、男は再度ウォルターを呼んだ。
足を止めず、振り向きもせず、ウォルターは「なに? 誘拐犯さん」と尋ねる。
「俺を牢にぶち込む前に、やることがあるだろ!」
「んー、なにかなあ? ぼく、思いつかないんだけど」