ラスト・ジョーカー
そう答えて、ウォルターはそこで初めて足を止め、男を振り返った。
「あんた、ほんとに馬鹿だね」
「……んだとォ!?」
「さっきから異形を捕まえろだの、少年を探せだのわめいてるけど、ぼくがそうしたところであんたの罪はあんたの罪。逃げられるとでも思ったの?」
思っていない。逃げられないことは男にもわかっていた。
ただ男は、自分一人だけが捕らえられ罰せられるのが気に食わないだけだ。
道連れがほしくて、ウォルターがちんたらしている間に異形に逃げられてしまわないかが気がかりなだけだ。
「でも残念だね、異形は捕まえるけど、死罪にはしない。あれは切り札だからね」
ニヤ、と笑って見せるウォルターに、男は顔をしかめた。
「けっ、なにが切り札だ。あんなごちゃ混ぜ女が」
「ごちゃ混ぜだから、だよ。……さ、行くよ」
言って、ウォルターは再び歩き出した。
その後について歩きながら、男は「どこに行くんだよ」と尋ねた。
ウォルターはにやにや笑いながら答える。
「あんたはねえ、普通の牢には入れないよー」
「はあ?」
「あんたが隠れ家にしてたあの塔、実はねえ、〈トランプ〉の実験場だったんだよねえ。あんた、知ってた?」