ラスト・ジョーカー
振り返るウォルターの笑顔をどこか気味悪く感じて、男は顔をこわばらせた。
「し、知らない!」
「でも、自分以外の人間があの塔を使っているとは気づいていただろう? 電気が通っていたんだから」
「知らないって言ってるだろ!」
「まあこの際、あんたが本当になにも知らないのかどうかはどうでもいいんだ。余計なものを見た可能性のあるあんたを、始末するのがぼくの役目だから」
始末、という言葉に、男はいよいよ震え上がった。
「待てよ! 始末って……」
「あ、ついたよ」
男の言葉を遮って、ウォルターが言って立ち止まった。
男は勢い余ってその背にぶつかった。
顔を上げても、闇が深くて前にはなにも見えない。
だが、なぜだかひどく気味の悪い感じがする。
暗闇の中で、なにか金属どうしがぶつかり合うカチャカチャという音を聞いた。
それから、鍵が開くような音。
扉があったのかと悟ると同時に、強く背中を押され、男は開いた空間に転がり込んだ。