ラスト・ジョーカー
6
*第四章 きみが呼ぶ名前 5*
誘拐犯の男を放り込んだ部屋の前から立ち去るウォルターの隣には、青い髪の青年の姿があった。
男を背後から部屋に突き飛ばしたのは、男の隣にいたウォルターではなく、彼だ。
「残念だったねえ、アレン?」
暗い廊下をちんたらと歩きながら、ウォルターは隣を行く青年――アレンに声をかける。
「せっかくアレンが『ゼンに正体がバレて逃げられた』ってスメラギ局長に嘘ついてまで、あの二人を逃がしたのにさあ。麻由良がぼくらに救助を依頼したせいで、ゼンの居場所、わかっちゃったね」
「……嘘じゃ、ないよ」
嘘だった。ゼンには正体を悟られていない。
アレンがスメラギ直属の〈トランプ〉特務防衛員――ジャックだということなど、ゼンもエルも知らない。
アレンの嘘など見通しているウォルターは、呆れたようにため息をついた。
「もうバレてんだから、悪足掻きはやめときなよ。命令に背くなんて、アレンらしくないなあ。あの二人に情でも移ったわけ?」
「……行こう。二人を捕まえるんだろ」
誘拐犯の男を放り込んだ部屋の前から立ち去るウォルターの隣には、青い髪の青年の姿があった。
男を背後から部屋に突き飛ばしたのは、男の隣にいたウォルターではなく、彼だ。
「残念だったねえ、アレン?」
暗い廊下をちんたらと歩きながら、ウォルターは隣を行く青年――アレンに声をかける。
「せっかくアレンが『ゼンに正体がバレて逃げられた』ってスメラギ局長に嘘ついてまで、あの二人を逃がしたのにさあ。麻由良がぼくらに救助を依頼したせいで、ゼンの居場所、わかっちゃったね」
「……嘘じゃ、ないよ」
嘘だった。ゼンには正体を悟られていない。
アレンがスメラギ直属の〈トランプ〉特務防衛員――ジャックだということなど、ゼンもエルも知らない。
アレンの嘘など見通しているウォルターは、呆れたようにため息をついた。
「もうバレてんだから、悪足掻きはやめときなよ。命令に背くなんて、アレンらしくないなあ。あの二人に情でも移ったわけ?」
「……行こう。二人を捕まえるんだろ」