ラスト・ジョーカー



 エルとゼンのそばにいることを、心地よく感じてしまった。



(局長は恩人なのに、おれは……)



 いつも冷たい目をして、アレンやウォルター、芽利加の前で一度も笑わないスメラギを、自分はどこか敬遠していたのだと、今さらのように気づく。



 真っ暗な闇の中を歩いているというのに、アレンは眩しげに目を細めた。


その視線の先に浮かぶのは、昨夜に見た、エルの笑顔だ。



 鈴に紐をつけてあげただけ。ただそれだけなのに、エルは本当に嬉しそうに笑ってくれて。


ウォルターの人を小ばかにしたような笑みとも、芽利加の愛想笑いとも違う、あたたかな笑み。


そんな笑顔を、最後に見たのはいつだっただろう。



 あのとき。エルの鈴に紐をつけてやったとき。


アレンが呟いた言葉は小さすぎて、エルの耳には届いていなかった。



(せめてもの償いにね、って、言ったんだよ)



 自分に心を許してくれたエルを裏切る、せめてもの償いに。


そんなことで償いにはならないと、わかってはいるけれど。



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