ラスト・ジョーカー
(快適な牢獄って感じね)
エルは諦めて再びベッドに座りなおした。
することもなく、時間だけが過ぎていく。
そうした空白の時間は思えば見世物小屋にいた頃以来で、ただ一つあの頃と違うのは、空っぽの時間に思い出すのはゼンの顔だということ。
不老不死であることを話してくれたとき、ゼンは痛みをこらえるような表情をしていた気がする。
まるで、それを知られることを恐れるように。
ああ、そうか。隊商の野営地で「あたしが怖くないの?」と尋ねたとき、彼は言った。
――おまえを化け物だと言ってしまえば、おれは自分を人間だと思えなくなる。
それは、彼が不老不死だから。
人々が異形を作り研究するのは不老不死が目的。
だから不老不死であるゼンは、異形の――化け物の、完成形なのだ。
(ゼンは、自分を化け物だと思っているのね)
エルと一緒なのだ。
化け物と呼ばれ忌み嫌われることを、ゼンも恐れている。
なら、ゼンに会って「それは違う」と言ってあげなければ。
不老不死だろうがなんだろうがゼンはゼンだ。
一人の人間の男の子で、エルの大切な人だ。