ラスト・ジョーカー
流れるように言って、エルの返事も待たずにカルラは部屋を出ていった。
今度は入れ違いに部屋に入る者はなく、静寂が訪れる。
エルはその静けさの中、胸の内で何度も何度もカルラの言葉を繰り返した。
「あたしを異形にしたのは、カルラ……」
それがわかったからといって、カルラに対する怒りは湧いてこない。
かわりに胸を満たしたのは、深い深い安堵。
(じゃあ、ゼンのお母さんは関係なかったのね)
アレンに捕らえられる直前、自らの秘密を明かしたゼンは自分が化け物であることと、
自分が化け物でなくなるためにエルが化け物にされたことをひどく気にしていた。
エルの目を見なかったのは、きっとそのせい。だから。
次にゼンに会ったときには、このことを教えてあげないと。
「次にゼンに会うとき」がいつになるかもわからないが、そう決意すると不思議と元気が湧いてくる。
明日カルラが来たら、ゼンがどこにいるのかそれとなく探りを入れてみよう。
そう決めて、エルは昼食の残りを片付けはじめた。