ラスト・ジョーカー

*第五章 二人のひとりぼっち 2*



 暗くじめじめした地下牢に、ゼンはいた。



 背に触れる石造りの壁は冷たい。


窓はなく、明かりといえばついさっきウォルターが食事とともに持ってきた古びたランプのみだ。


唯一の出口は太い鉄格子がはめられている。


逃げようとしたことがないからゼンにはその強度はわからないが、どうせ殴っても蹴ってもびくともしないだろうし、PKを無効化する仕掛けもされているはずだ。



 真っ暗で何もない空間に、ただ時間だけが流れる。



 牢の中に置いたままの盆には、手つかずのままの食事が残っている。


牢に入れられて何日が経ったのかわからないが、その間出された食事にゼンは一切手をつけなかった。



「ねー、いいかげんご飯食べなよー」



 見張りのウォルターが牢を覗き込んで言った。



「へんなものは入ってないからさぁ」

「べつに、食べなくても死なない」

「でもお腹はすくんでしょー?」



 ゼンが牢に入れられてからというもの、ウォルターはこうして何度も無駄に話しかけてくる。



 この我慢比べにウォルターが勝ったためしはない。


押し問答をしているうちに見張りの交代の時間がやってきて、いつもウォルターがしぶしぶ盆を持って帰っていくのだ。



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