ラスト・ジョーカー
「言い訳するなよ。旦那は怖かっただけだろ」
「はぁ? 何言って……」
「エルちゃんさんを異形にしたのが旦那の母親かもしれないと、エルちゃんさんは旦那の不老不死を解くための鍵として異形にされたんだと、エルちゃんさんが知って。嫌われるのが怖かっただけだろ。
エルちゃんさんが旦那を嫌いになる瞬間を見たくないから、〈トランプ〉に逃げたんだろ。自分が弱かっただけじゃないか」
石の壁に反響した言葉は、思いのほか鋭くゼンの胸に刺さった。
――それが、図星だったからだ。
「エルちゃんさんは旦那を嫌ったりしていないよ。それどころか、旦那がどうしてエルちゃんさんにあんな態度取ったのか、きっとちゃんとわかってる。
それなのに、エルちゃんさんのためみたいな言い方するなよ!」
何も言えず、ゼンはアレンから目をそらした。
アレンはそんなゼンに構わず鉄格子の前から離れると、その場にかがみ込んだ。
そして真っ暗な中、何かを探すように地面をまさぐる。
「おい、なにして……」
ゼンの言葉にかぶせて、ベリッ、と何かが剥がれるような音がした。
アレンが地面から剥がしたのは、長方形の白い紙だ。
暗闇にぼんやりと浮かび上がって見えるそれと同じものを、ゼンはつい最近見た。