ラスト・ジョーカー



 赤い塔の上で、ミオを誘拐した男が持っていた魔除けだ。


それを貼った場所から一定範囲に結界が張られ、その結界の中ではPKが使えなくなる。



 アレンはそれを、何のためらいもなく縦に引き裂いた。



「おまえ、何してんだよ!?」


「これでもう、ゼンの旦那は好きなだけPKを使える」



 そう言って、アレンはジーンズのポケットからなにかを取り出し、鉄格子の隙間からゼンに手渡した。



 それは手のひらほどの大きさのノートだった。


古いものなのだろうそれは端が擦り切れ、古い本特有のカビの匂いがする。



「あと、これも」



 と言ってアレンが再び手渡したのは、小さく折りたたんだ紙と一枚のカードだ。



「その紙には、〈トランプ〉が知っている範囲でのエルちゃんさんについての情報が書いてある。後で読んで。そのカードはエルちゃんさんの部屋のキー」



「キーって……おまえ、どういうつもりだよ!」



「エルちゃんさんの部屋は最上階にある。ゼンの旦那さえその気になれば、おれが案内してあげる。

おれは〈トランプ〉から逃がしてあげるまでしかできないから、逃げた後は旦那次第だけど」



 もはや呆然として何も言えないゼンに、アレンは静かに言った。



「あとは、旦那がその鉄格子をぶち破るだけだ」



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