ラスト・ジョーカー
アレンの言葉が反響して、止むと、あとには沈黙だけが残った。
愕然としたゼンの翠の目と、まっすぐなアレンの蒼い目がにらみ合う。
「おれとエルを逃がして……おまえは、それでいいのかよ」
ぽつりとつぶやくように言ったゼンの言葉に、アレンはなんの迷いもなく頷いた。
「ずっと迷ってたんだけど、さっきエルちゃんさんに会って、心が決まった。二人を裏切ったおれが言えたことじゃないけど、おれは、これからも二人には笑って旅をしてほしい」
暗くてアレンの表情は見えないが、低く静かな声に切実ななにかがあると、たしかにわかる。
「でも、〈トランプ〉を裏切ったとかでおまえが処罰されたら……」
眉をひそめてゼンが言うと、
「大丈夫だよ。こう見えておれ、けっこう強いし。
それに、ジャックになれるほど強い人間は貴重なんだよ。〈トランプ〉側だってほいほい殺したりしない」
と、闇の向こうで笑う気配がした。
アレンに自分の気持ちを指摘され、エルの情報やカードキーまで用意され、
その上「行こうよ。エルちゃんさんが待ってるよ」と言われてしまえば、――もう、ゼンに選択の余地などなかった。
舌打ちを一つして、ゼンは鉄格子に右手をかざす。
その手の先から青い光がほとばしり、太い鉄格子が徐々に湾曲していく。
その青い光の先で、アレンが安心したように笑っているのが見えた。