ラスト・ジョーカー
「まさか、……ゼン?」
「当たり」
そう言って人影はパーカーのフードを脱いだ。
その下から現れた灰白の髪を、エルまじまじと見つめる。
「どうしてここに? アレンが連れて来たの?」
目を白黒させて尋ねるエルの口を、ゼンが慌てて塞ぐ。
「静かに。……ここから逃げるぞ。今、すぐに」
そう言うと、ゼンはエルの手首をつかんで扉を薄く開けた。
アレンが廊下に出て人がいないことを確認して頷くと同時に、ゼンとエルも部屋を出る。
「どうやって外に出るの?」
エルが小声で問うと、アレンはポケットからカードキーを取り出して、隣の部屋の鍵を開けた。
「エルちゃんさんの部屋の窓ははめ殺しで開けられないから、隣の部屋の窓から出るんだよ」
言いながら、アレンは部屋の扉を開ける。
その部屋からつい先ほど人の声が聞こえたことを思い出して、エルは慌てて「ちょっと待って!」と止めようとするも、遅かった。
ゼンに押されて部屋に転がり込み、アレンの背中に顔面からぶつかったエルは、
ぶつけた鼻をさすりながら部屋の中を見て、――あまりにわけのわからない光景にただただ呆然と立ちすくんだ。
部屋の中央にはエルの部屋にあったものと同じ真っ白なベッドが一台あって、他にはなにも置かれていない。
そしてそのベッドに横たわるのは、エルたち三人の見知った人物だった。