ラスト・ジョーカー
「局長……?」
苦しそうに青い顔をしたスメラギがそこにいた。
エルたちの存在に気づいて、スメラギはこちらに顔を向けた。
「おまえ、たちは……」
開け放したドアから廊下の光が入って、逆光でエルたちの顔が見えないのだろう。
スメラギは弱々しい声で誰何した。
「……アレンです」
アレンが答えて、スメラギのもとへ駆け寄った。
「局長、どうしたんですか。体調悪いんですか? でもなんでこんなところで寝て……」
動転した様子で問いただすアレンの言葉を遮って、スメラギは「……そこの二人は、誰だ」と尋ねた。
アレンがこわばった顔でエルたち二人を見た。
その目が迷うように揺れる。
エルとアレンの目が合って、数瞬の後。
アレンがふいに立ち上がり、エルのそばを通り過ぎて扉の近くへ歩いていった。
パチッという音とともに、部屋が明るくなる。
アレンが部屋の電気をつけたのだ。
暖かい色合いの明かりに照らされても、スメラギの顔は血の気がなく真っ青だった。
漆黒の髪の間からのぞく切れ長の赤い眼がエルを見る。
「局長、おれは……」
アレンが呟くように言って、うつむいた。
「すみません、おれは、この二人を逃がします。だってこんなのおかしいです! 〈トランプ〉の目的のために二人の自由を縛るなんて……」