ラスト・ジョーカー



 スメラギはそこで一度、疲れたように息を吐いた。


やはり体に負担がかかるのだろう、最初にエルたちが部屋に入ったときよりも顔色が悪い。



 しかし、その眼の光は強い。

まっすぐに見つめられたエルが、蛇に睨まれた蛙のように動けなくなるほどに。



「だが私は見ての通り動けない。〈トランプ〉内の者を動かせば芽利加に悟られる。……情けない話だがおまえに託してもいいか」



「託す……あたしに、なにを」



「不老不死を――ゼンを守ってほしい」



 まっすぐにエルの眼を射る赤い瞳を見返して、エルはなにも言えずに固まった。



 ゼンを守ってほしい。


そう、スメラギに言われるとは思っていなかったのだ。


エルに石を投げるカルラを止めなかったスメラギに。


エルを「研究資料」と呼んだ、ゼンを反逆罪で指名手配したスメラギに。



「ひとを地下牢にブチ込んでおいてよく言うよ」



 ゼンが皮肉な笑みを浮かべて言った。


「えっ、そうなの?」と、エルは思わずゼンの顔を見る。



「旦那、あのね」と、アレンが慌てたように口を挟んだ。


「地下牢は局長が許可した人しか入れないんだ。現に旦那が地下牢にいた三日間、芽利加さんは旦那に接触しなかっただろ?

地下牢にいる人間をどうこうする権限は芽利加さんにないんだ」



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