ラスト・ジョーカー



 なるほど。ゼンをかくまうには地下牢が最適というわけだ。


だが、そう納得できたからといって、エルはすぐにはズメラギを信用することなどできなかった。



「あなたは、それでいいんですか」



 なんと言うべきかわからず、迷った挙句にエルはそう尋ねた。



「あたしを捕まえて、果たしたい目的があったんじゃないんですか。

あたしが今ゼンと一緒に逃げて、あなたはそれでいいんですか」



 問われたズメラギは、ふとどこか遠くを見るような目をした。



「私の目的は、母を解放することなんだ」



「……お母さん?」



「ああ。母は、……不死なんだ。だから、不老不死を解く鍵であるおまえを捕らえて母を解放してもらおうと思った」



「ばかな! 不老不死を完成させた者が、綾崎マツリ以外にいるってのかよ」



 鋭い目つきで睨みつけるゼンに、スメラギは首を横に振って「いや、不老不死を完成させたのは綾崎マツリだけだ」と答える。


エルは初めて聞く名前だが、「綾崎マツリ」というのはゼンの母の名前だろうと容易に察せられた。



「不老不死ではないが、それに近いものを作り出した研究者がいた。紫蘭(シラン)・ローゼフィリア……私の父で、綾崎マツリの友だった」



「ゼンのお母さんと同じ時代に生きた人――ってことは〈裁きの十日間〉を経験した人……なのよね?」



「そうだ」と、スメラギは頷いた。

「〈裁きの十日間〉の間に死んだ」



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