ラスト・ジョーカー



「きっと、たまたま名前が同じだっただけよね」


 エルはそう言ったが、ゼンは即座に首を振った。



「いや、おれたちが知ってるあのカンパニュラが、スメラギの母だ」



「どうしてそう思うの?」



「以前、カンパニュラがおれの前にだけ現れたことがあった。

そのときに『その髪は元から白いのか』と訊いたんだが、カンパニュラは違うと言った。そして、『髪が白くなった原因はあなたと同じだ』と」



「……?」



「おれの髪は、もとはこんな色じゃなかった。この髪が白くなったのは、おれが不老不死の体になったときだ」



 エルは眉間にしわを寄せてその言葉の意味を考えた。


ゼンの髪が白いのは不老不死の副作用のようなもの。


カンパニュラの髪色が白に変わった理由がゼンと同じということは。



「カンパニュラが不老不死で、髪が白いのがその証拠だってこと?」



「そうだ」



 ゼンが頷いて、スメラギを見た。



「だがわからないな。普通に考えれば、カンパニュラがおまえを産むのは無理だ。

しかもおまえ自身が不老不死でなく、その上おまえの父が百年前に死んでいるということは、おまえは百年の間ずっとカンパニュラの腹の中にいてつい数十年前に産まれたということになる」



 それもそうだ。そんなことがはたしてありえるのか、と、エルもスメラギに視線を移した。



< 204 / 260 >

この作品をシェア

pagetop