ラスト・ジョーカー
「旅の途中でもしも不老不死を解く方法がわかったら……母を、どうか解放してやってほしい」
声が震えていた。それだけ彼が心の底からそれを願っているのだとわかって、エルは胸が痛んだ。
――それを叶えられないかもしれないから。
なぜ自分が「不老不死を解く鍵」と呼ばれているのかもエル自身にわからないのに、不老不死を解く方法などわかる日が来るとも思えないし、もしそれがわかったとして、エルには先約がある。――ゼンだ。
それをおそらくスメラギもわかっている。
それでも彼は今、〈トランプ〉局長としての役目を優先して、エルたちを逃がそうとしているのだ。
だからエルも、誠意をもってスメラギに応えたいと思った。
「期待に応えられるかはわからない。けど、……あなたの言ったこと、ずっとずっと覚えておく。それで、ちゃんと考えておく。それでいいかな」
エルの精一杯の答えに、スメラギはただ、静かに頷いた。満足そうに微笑んで。
「どうかゼンを――不老不死を守ってくれ」
「ええ、任せて。ゼンはあたしが守る」
「おまえに託そう、エル」
そう言うと、スメラギは疲れたように、だけどどこか満足そうに深く息を吐いて目を閉じた。