ラスト・ジョーカー
鞄から昼食のパンを取り出してエルにわたすと、ゼンはパーカーのポケットから折りたたんだ紙を取り出した。
「なに、それ?」
パンをかじりながらエルが問うと、ゼンは短く「アレンから」と答えた。
手紙かなにかだろうか、と紙を覗き込んで、エルは眉をひそめた。
「被験体L146号は本名を名瀬優子。五百年前の『はじまりのサイキック』その人である……?」
被験体L146号というのは自分のことだと、エルはもう知っている。ということは。
「あたしのことを言ってるの……?」
「ああ。エルについて〈トランプ〉が知っている範囲での情報が書いてあるって、アレンが」
名瀬優子。では、それが自分の本当の名前なのか。
エルは他人事のようにそう思った。
どこか呆然としたまま、小さな声でエルは続きを読み上げる。
「名瀬優子は幼少時よりサイキックとしての素養の高さゆえにポルターガイストを頻繁に起こし、その力を利用しようしたマフィアやテロ組織等に狙われることが多く、日本中を転々としていた」
一言読み上げるにつれ、まるでそれを阻止しようとするかのように、ズキズキと頭が痛む。それでもエルは先を読み進めた。
「十五歳のときにPKの暴発によって……友人を殺してしまう」