ラスト・ジョーカー



「……それから?」



「いや。異形となった名瀬優子は〈トランプ〉から逃走。以来行方が知れず、ジャックの捜索によって五年後にエリア〈ユウナギ〉にて発見される。

……あとは、身体能力とかに関する研究結果とかだな。不老ではあるが不死ではなく、治癒の速度を上回るほど大量に失血した場合等は死亡すると考えられる、とか。

治癒能力や身体能力が高いため消費されるエネルギーも莫大であるため、常人より多くの食事・睡眠を必要とする、とか」



「そっか……」



 深く息を吐いて、エルは背の力を抜いて背後の岩にもたれた。


こつん、と後頭部が軽く岩にぶつかる。



 あまりに唐突に、それもずいぶんあっさりと判明した自分の過去。


それを知ったはいいが、自らの力で思い出すことのできないエルにとって、その過去はまるで誰か他の人の話のようで実感が持てない。



 ただ、わかったことが一つ。



「あたしは……ゼンの言ってた〈ジョーカー〉だったんだね」



――名瀬優子は幼少時よりサイキックとしての素養の高さゆえにポルターガイストを頻繁に起こし、マフィアやテロ組織等に狙われることが多く、日本中を転々としていた。



 それは、エリア〈ユウナギ〉を出る前夜にゼンに聞いた〈ジョーカー〉の話と酷似する。


ずば抜けて強力なPKをもち、その力を全人類へ波及させた「始まりのサイキック」――世界で最初の化け物だ。



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