ラスト・ジョーカー
そんな自責や悔恨が何ページも続いた後。
――真澄のお兄さんと話して、わたしは自分を封印することにした。この力でわたしの時間を止めて眠る。わたしの体はお兄さんが預かっていてくれるみたい。だから日記は、きっとこれが最後になる。
その最後の日記は、残り少ないページにできる限り小さく詰めて、少し震えた文字で書かれていた。
――この日記もお兄さんに預ける。眠っている間に死ぬか、長い時間が経ってまた目覚めるのか、それはわたしにもわからない。そもそも自分を封印するなんて途方もない話、成功するかどうかもわからないけど。次に目が覚めることがあれば、この力がなくなっていたら、いい。
日記はそこで終わっていた。あとに残ったのは一行の空白だけだ。
小さく息を吐いて、エルはノートを閉じた。
それまで黙って隣に座っていたゼンが「終わったのか?」と声をかける。
「うん……」
「……なにか、思い出したか?」
「ううん、なにも」
エルが首を振ると、ゼンは「そうか」と呟くように言って立ち上がった。
そして服についた砂をパタパタと払うと、座ったままのエルに手を差し伸べた。
「休憩はこれくらいにして、先を急ごう」
うん、と頷いて、エルはその手を取る。
(いつも通りだ……)
握った手の温度が。いつもと同じ、大きくてあたたかい手だ。
(ゼンは、いつも通りだ。あたしが化け物だとか、……ジョーカーだとか、そんなの関係なく)
それが嬉しくて、だからエルは笑って立ち上がった。