ラスト・ジョーカー
5
*第五章 二人のひとりぼっち 5*
「わあ……!」
高い空にエルの歓声が響く。
エリア〈シロガネ〉を出た、翌日の夕方。夕陽に照らされて朱く染まる砂の大地が、――延々と続いていた砂の大地が、ふいに途切れた。
「すごいすごい! 海だ!」
ザン、と波の音が興奮しきったエルに応えるように響いた。
二人の目の前には、空の色とよく似た真っ青な海原が広がっている。
神戸湾というらしいその海の水はよくよく見ればきれいとは言い難かったが、夕陽を映して金や赤にきらきらと輝いていた。
はしゃいだ様子のエルを見遣って、ゼンは呆れたように小さく笑った。
「この辺りはもとは『神戸』と呼ばれていたらしいが、〈裁きの十日間〉の被害を受けて神戸という街ひとつがまるごと海に沈んだ、と言われている」
「街ひとつ、まるごと!?」
エルは目を丸くして海を見つめた。
神戸といえば――真澄の住んでいた場所、そして名瀬優子の故郷だ。
そうか、沈んだのか。
ふと、わびしさのようなものが胸をよぎる。
それをふり払うように小さく首を振って、エルは隣のゼンを振り向いた。
「でもゼン、これからどうするの? 〈ヨザクラ〉に行かなくちゃいけないんでしょ?」
訊かれたゼンは何食わぬ顔で「もちろん、渡る」と答えた。
「わあ……!」
高い空にエルの歓声が響く。
エリア〈シロガネ〉を出た、翌日の夕方。夕陽に照らされて朱く染まる砂の大地が、――延々と続いていた砂の大地が、ふいに途切れた。
「すごいすごい! 海だ!」
ザン、と波の音が興奮しきったエルに応えるように響いた。
二人の目の前には、空の色とよく似た真っ青な海原が広がっている。
神戸湾というらしいその海の水はよくよく見ればきれいとは言い難かったが、夕陽を映して金や赤にきらきらと輝いていた。
はしゃいだ様子のエルを見遣って、ゼンは呆れたように小さく笑った。
「この辺りはもとは『神戸』と呼ばれていたらしいが、〈裁きの十日間〉の被害を受けて神戸という街ひとつがまるごと海に沈んだ、と言われている」
「街ひとつ、まるごと!?」
エルは目を丸くして海を見つめた。
神戸といえば――真澄の住んでいた場所、そして名瀬優子の故郷だ。
そうか、沈んだのか。
ふと、わびしさのようなものが胸をよぎる。
それをふり払うように小さく首を振って、エルは隣のゼンを振り向いた。
「でもゼン、これからどうするの? 〈ヨザクラ〉に行かなくちゃいけないんでしょ?」
訊かれたゼンは何食わぬ顔で「もちろん、渡る」と答えた。