ラスト・ジョーカー



「言っただろう。〈裁きの十日間〉が起こる前まで、世界はサイキックと非サイキックに二分されていた。

非サイキックたちはサイキックを差別し、科学の力でもってサイキックに勝とうとした」



「じゃあ、まさかサイキックたちがPKで起こしたって言うの?」



「それは違う。――災害ではサイキックも大勢死んだから」



 そうか。サイキックが科学者たちを憎んで〈裁きの十日間〉を起こしたのなら、自分たちまで死ぬようなことにはならないはずだ。



「じゃあ……?」



「差別に追い詰められたサイキックたちの抑圧されたストレスが、本人の無意識のうちにPKを体から漏洩させ、世界中に充満したサイキックたちのPKが災害を起こした」



 なんとなく、理屈はわかる気がする。



「無意識のうちに漏洩したPKは、サイキックたちのストレスの直接的な原因であった科学者たちを襲ったが、災害は意識的に起こされたわけではないために、サイキックたちも大勢犠牲になった」



「そうだったの……」



「一説によると、な。それで、この風の音は本当は犠牲になったサイキックたちの悲鳴だ、とか言われてる」



 それを聞いてしまうと、もう悲鳴にしか聴こえなくなってしまう。


エルは背筋がぞわりと粟立つのを感じた。


< 219 / 260 >

この作品をシェア

pagetop