ラスト・ジョーカー

*第五章 二人のひとりぼっち 6*



「おい相楽!」



 着地するやいなや、ゼンはそう言って庄戸相楽のもとへ駆け寄る。



「おまえ、スメラギにおれのことばらしただろ!」



 詰め寄られた相楽は「まあまあ」とゼンをなだめると、肩をすくめた。



「ばらすつもりはなかったんですけどね、スメラギくんが自分でほとんど調べてしまっていたから。僕はその補強をしただけです」



「補強はしたんじゃねえか……」



「まあいいじゃありませんか。彼は不老不死をこの世に蘇らせようとしているわけじゃないんですから」



 まったく悪びれない相楽に、ゼンは諦めたようにため息をついた。



 それから、相楽は置いてけぼりのエルを見る。



「ゼンくん、この子は?」



 尋ねられたゼンは「エル」と短く答えた。



 ずさんな紹介だなあ、とエルは苦笑したが、相楽はそれですべて了解したようだ。



「へえ、君が例の名瀬優子さんか。マツリが『ジョーカー』と呼んでいた子ですね」



「マツリが、って……」



 まるで百年前に死んだ綾崎マツリから直接聞いたような言い方だ。



 怪訝な顔をしたエルに微笑みかけて、相楽は言う。



「まあ、立ち話もなんですから、とりあえず僕の家に来ませんか。すぐ近くですし」



「もとからそのつもりだ」応えたのはゼンだ。「知ってること全部吐いてもらうからな」



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