ラスト・ジョーカー
ずっと、――〈シロガネ〉を出てからずっと、目をそらし続けていたこと。
ゼンは相楽に「知っていることを吐け」と言った。
それは、ゼンが保護を求めるためではなく、不老不死の解き方を――あるいはそれに関係するなんらかの情報を得るために相楽に会いにいったのだということを示している。
庄戸相楽に会ってしまえば、不老不死の解き方もきっとわかってしまうのだと、エルはわかっていた。
そうなれば、ゼンを殺すか殺さないか、決めなくてはならないと。
「あたし……」
百年。
百年、ゼンは生きてきた。
長い長い月日の、その百分の一もエルはゼンと共に過ごしていないけれど。
(でも、わかる。ゼンってときどきすごく虚ろな目をするから。……きっと、ものすごく寂しいんだ)
ゼンの家族も友達も、きっともう皆生きてはいない。
十七歳のゼンを置いていったまま、みんな年を取って、この世を去っていった。
このままこの世に在り続けることが、ゼンにとって幸せなことだと、エルにはとても思えない。
「それが、ゼンの幸せなら」
驚いたように目を見開いたゼンを見返して、エルは言う。
「あたし、ゼンと一緒に旅ができてよかった。楽しかったわ。だから、その恩返し」