ラスト・ジョーカー
「では、名瀬さん、……人間に戻れなくてもいいと?」
問いかけた相楽に、エルは頷いた。
「異形として在る限り、きっとあたしは化け物と蔑まれて、恐れられて生きていかなくちゃいけない。かばってくれるゼンもいなくなってしまったらって思うと、怖い。でも」
エルはそこで一度言葉を切った。
目を閉じて、思い出す。
ゼンと一緒に旅に出てから、出会った人たちのこと。
アレンとスメラギはどうしているだろう。
麻由良とミオには、きちんとさよならを言わずに別れてしまった。
ガランとだって、本当はもっと仲良くなりたかった。
「あたしがもし、異形でも何でもないただの女の子だったら。
きっと、麻由良さんやミオをモウセンゴケから助けられなかった。アレンだって、ハエジゴクに食べられていたかも」
あ、でも、アレンの場合は倒れていたこと自体が芝居だった可能性もあるわけだ。
そう思って、エルは苦笑した。
「あたしは化け物だけど、この化け物の力が大切な人を守る力になるなら、あたしは化け物でかまわない。……それから」
「それから?」
「あたしは、エルです。名瀬優子でも、L146号でもなく、ジョーカーでもない。
今のあたしは、エルです。それ以外の何者でもない」