ラスト・ジョーカー
「お会いできて光栄です、不老不死の少年。わたしはサザナ・芽利加と申しますわ」
ゼンは応えない。ただまっすぐに芽利加を睨みつけている。
芽利加はそんなことなどまったく意に介さず、にっこり笑うと、
「あなたにはぜひ〈トランプ〉にご同行願いたいのだけれど、その様子だと素直に従っていただけそうにありませんね」と言った。
「当たり前だ。不老不死を再びこの世に蘇らせてはならない」
「では、力ずくでお連れするしかありませんね」
そう言ってにこりと笑うと、ウォルターがさっと手を挙げた。
――と同時に、相楽の家の真横に立っていた樹がバリバリと音を立てて倒れた。
「脅しのつもりか」
ゼンが忌々しそうに言って、舌打ちをした。
エルもゼンも、上空の芽利加を睨みつける。
温厚な相楽でさえも、険しい顔をしていた。
芽利加はただにこにこと笑っているだけだ。
ウォルターは、退屈そうに芽利加の次の指示を待っている。
宙に浮いた二人と、地に立った三人。
両者とも一歩も動かぬまま、互いにじっと睨み合っていた。