ラスト・ジョーカー
それを見かねて、「相楽さんに連絡をもらって、カンパニュラさんにここまで連れて来てもらったんだよ」とアレンが説明する。
「普通はワープなんて大技使ったら、PKを使いすぎて死んでしまうんだけど、ほら、カンパニュラさんは不死だから」
「それが母の特性なんだ」
説明を引き継いだのはスメラギだ。
「PKを限界まで使っても、『未来の自分』からPKが供給される。だからPKを使いすぎると、『未来の自分』に近づく。
だが、『巻き戻り』にPKを消耗するから、若返りが始まるとPKを一切使えなくなる」
一日半前に会ったときには青い顔をして寝込んでいたはずのスメラギだが、今は平気な顔で立っている。
「スメラギ、怪我はどうしたの?」
「それもわたしが治したわ」
答えたのはカンパニュラだ。本当になんでもできるんだ、と感心して、エルはようやく思い至る。
――カンパニュラがいれば、ゼンを取り返せるのではないだろうか。
エルは上空の芽利加を睨んだ。
微笑みを浮かべて優雅に空に浮いている芽利加のそばには、ゼンを閉じ込めた結界が浮いていた。
芽利加としてはそのままゼンを連れ去りたいのだろうが、ゼンが結界を張り直して抵抗している。
――だがそれも、時間の問題だろう。ゼンは肩で息をしている。
もう体力の限界なのは、遠目に見ても明らかだ。