ラスト・ジョーカー



 エルはその結界に手を伸ばして触れた。


そのときになってようやく、アレンが慌てたように腕を解く。



「エルちゃんさん、怪我はない? 怖くなかった?」



 心配そうに顔を覗き込んでくるアレンに頷いて、エルは小さく笑った。



「絶対に守ってくれるって、わかってたから」



 なぜだろう。ゼンが名前を呼んだとき、そんな気がした。



(でも、ゼンは)



 ゼンはどうなったのだろう。

もう体力の限界だったはずだ。



 エルは空を仰いで、ゼンの姿を探した。


――だが、見つからない。頭上にはただ夜空があるだけだ。



「ゼン! どこ!?」



 そう叫んだとき、遠くから「う……」とうめくような声が聞こえた。


エルが声のした方を見ると、ゼンと、少し離れたところに芽利加が倒れている。


おそらくは稲妻と結界が衝突したときの衝撃で、芽利加はPKを保てなくなったのだ。



 エルはすぐさまゼンに駆け寄ろうとして、だが後ろから腕を引っ張られて足を止めた。



「スメラギ? どうしたの」



 訝しげに眉をひそめたエルの腕をつかんだまま、スメラギは「見ろ」とゼンを指差した。


エルは言われたとおりにゼンを見る。



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