ラスト・ジョーカー

10

*第五章 二人のひとりぼっち 10*



 深い深い地の底にでも沈んだような気分だった。



 頭が痛くて、吐き気がする。

全身が重くて、身動きができない。



(おれ、死ぬのか……)



 そんなことを考えた自分に、ゼンは苦笑した。



 そうだったら、どんなにいいか。



 だけど結局自分だけ死ねないまま、百年もの間、十七歳の姿のまま生きてきた。



 マツリ亡き後に引き取ってくれた親族は、何年経っても変わらないままのゼンを気味悪がって、「留学をさせる」というかたちでゼンを家から追い出した。



 その親族も、もう生きてはいない。



 友人はどんどん年を取って、結婚して子どもを授かって、老いて死んだ。



(おれだけが、十七のまま変われない)



 一人で。ずっと独りで、この百年を生きてきた。



 ゼンはそっと目を閉じた。


いっそこのまま二度と目が開かなければいいと、思いながら。



 だが、そのとき。



 声が、聞こえた気がした。


すこし遠くて、何を言っているのかはわからない。だが、この声は。



(エル、か……?)



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