ラスト・ジョーカー
歌のつばさのうえに乗り
いっしょに行こう恋びとよ
ガンジスの草原に
ふたりのいこう場所がある
歌が始まると、それに応えるようにカンパニュラの体が白く輝きはじめた。
しずかに月ののぼるとき
あかく咲きでる花の園
池にただよう蓮らは
いとしいきみを待っている
歌声が、空に舞う。高く、高く舞い上がって、天に届く。
すみれは たがいにほほえんで
星をあおいでかたりあう
ばらは たがいにむつまじく
あまい話に頬よせる
ときどき、喉が詰まって嗚咽が漏れそうになる。だけどその度にゼンが手を握ってくれて、だからエルは歌い続けた。
はねてあらわれ耳すます
かわいい羚羊のしたり顔
とおくさらさらひびくのは
きよい流れの波の音
歌いながら、カンパニュラの体が透き通っていくのをエルは見た。
その花園のしゅろの樹の
かげにふたりはよこたわり
恋のうまざけくみかわし
たのしい夢をみよう
カンパニュラから放たれる光が、ひとひら、ふたひら、空に舞い上がっていく。
そうして最期に一つ微笑むと、妖精のような彼女は、本当に妖精のように光の粒となって、空に消えた。
つい先ほどまでカンパニュラがいた空間を呆然と見つめるエルに、スメラギは深く、深く、頭を下げた。