ラスト・ジョーカー



「はじめまして、エルに、ゼン。

わたしは、カンパニュラというの。よろしくね」




 そう言って、カンパニュラは微笑む。


その花が咲く瞬間ような光景にエルは魅入られたが、ゼンは眼を剣呑に細め、厳しい口調で尋ねた。




「なんで名前を知っている。それに、どこから入った?」



 それはエルも気になっていた。

この少女は突然エルとゼンの間に現れたように見えたが、はたして実際のところはどうなのだろうか。



 だが、返ってきた答えはいたって普通なっものだった。



「名前は、あなたたちの会話を聞いていたからわかったの。入ったのは、あの窓からよ」



 カンパニュラは細い指で窓を指差した。



 二人が同時に不審げな顔をする。


それを見て、カンパニュラがまた、ふふふ、と笑った。




 そしてその瞬間、カンパニュラの姿が二人の前からかき消えた。



 二人とも、もう驚きすぎて声も出ない。

きょとん、とした顔で、カンパニュラがいたあたりを見つめた。



 すると、そのなにもないはずの空間から、少女の声がした。


「見ての通りよ。わたし、透明になれるの」


 ふふふ、と笑って、カンパニュラがまた現れた。

先程彼女が消えた、まさにその位置に。



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