ラスト・ジョーカー
エルはまだ目を白黒させていたが、ゼンの切り替えは早かった。
「すると、こういうことか。おまえは透明になった状態で窓から入ってきて、おれたちの話を聞いていた。
そしてわざわざおれたちの間に入って、あのタイミングで現れた、と」
カンパニュラは満足げに頷き、それから肩をすくめた。
「だって、あなたがあんまり無謀極まりない作戦に出ようとするんだもの。焦っちゃったわ、わたし」
「ならどうしろと言うんだ」
ゼンは腹立たしげに言うと、まだ呆然としているエルを振り返る。
「今、カードどもはどのあたりにいる?」
「……え? あっ、えっとね……」エルはやっと我に返って、じっと耳をすませた。
「……大変!もう隣の家にいるよ。だいたい、十二人くらいいる」
それを聞くと、ゼンは大きな舌打ちをして、エルの腕をつかんだ。
エルを連れて、先程言っていた作戦を実行するらしい。
だが、カンパニュラが間に入ってゼンの腕を引き離した。
「まあまあ、待ちなさいな」
ゼンは眉をひそめて、その手を振り払う。
「なんなんだ、一体。待っている時間はない」
焦燥と苛立ちのにじむゼンの声に、カンパニュラはたおやかに微笑むと、
「まあ落ち着いて、動かないで」と言って、再びゼンの腕をつかんだ。