ラスト・ジョーカー
すぐにでも訊きたかった。
だが、ゼンの剣呑に眉をひそめた顔を見て、そんな雰囲気ではないと悟った。
「ばかな。人間のサイコキネシスで、ワープなんて大技が使えるはずがない」
カンパニュラをまじまじと見つめてそう言ったゼンの目は、懐疑に満ちている。
だが、カンパニュラが実際に、できるはずのないワープをしてみせたのは事実だ。
「できてしまったのだからしかたがないわ」
カンパニュラは余裕の笑みを見せてうそぶく。
ゼンは一つ舌打ちをすると、小屋の中に入っていった。
そしてまたすぐに、荷を持って出てくる。
そのときになって、エルはようやく、カンパニュラがゼンの荷物も一緒にワープさせたことに気がついた。
「あんたは、なんだ。普通の人間じゃないな。このエリアの住人か?」
荷を肩に掛けたゼンは、カンパニュラに問う。
「わたしにも、わたしがなにかなどわからない。あえて言うなら『化け物』でしょうね。
〈ユウナギ〉には住んでいないよ。
今日たまたまこのエリアに来て、たまたま君たちに興味を持った、ただの旅の化け物よ」