ラスト・ジョーカー

*第二章 世界の形 2*



 カンパニュラと別れた後、ゼンとエルは森の中を歩き通し、日が沈む頃に適当なところで野営をすることになった。



 ゼンが一人分のマントを荷から出して羽織り、ランプの火を消して眠る準備を整え始めたころ、

日中は黙ってゼンについて歩いたエルは、ありったけの不満を顔に浮かべて言った。



「ゼン、せっかく助けてくれたのに、カンパニュラにあんな態度はよくないと思うわ」


「もう会うこともないような奴を気にしてどうする」


 ゼンの返事はにべもない。


「そんなのわからないじゃない」


「じゃあ、あの場でなにができた。おれは急いでいたし、それに、礼になにか渡せるほど余裕があるわけでもない。

……あんな規格外のサイコキネシスを持った得体の知れない女に、あれ以上関わりたくなかったしな」



 最後の一言はともかく、それもそうだ。

エルは押し黙った。

顔にはまだ不満を浮かべたままだ。

理解はできたが、感情がついていかなかった。



 そのときふと、今なら質問ができるのではないかと思い、エルは「ゼン」と呼びかけた。



「なんだよ」



 エルのほうを見たゼンは、いかにも鬱陶しそうだった。

まだ文句があるのか、と言いたげなのがありありとわかる。



「えっとね、サイコキネシスとかPKって、なに?」



< 34 / 260 >

この作品をシェア

pagetop