ラスト・ジョーカー
わかった、とエルは素直に頷いた。
そういえばゼンはずっと眠たそうにしていたな、と思うと、申し訳ない気持ちになった。
エル自身もずっと眠気を我慢していたので、そのまま地面にごろんと横になった。
すると、ゼンが羽織っていたマントをエルに投げてよこした。
「それ、やる。くるまってろ」
予想外の言葉に、エルは眉をひそめて起き上がった。
「これ、ゼンのものじゃないの?」
まじまじとゼンを見て言うと、ゼンはなぜかバツの悪そうな顔をして、頭をがしがしと乱暴に掻いた。
「おれはいらないから、使え。風邪でもひかれて死なれても困る」
「風邪で死ぬとしたら、異形であるあたしよりも、人間であるゼンだと思うけど」
そう言ってマントを差し出そうとすると、ゼンは不機嫌そうに眉間にしわを寄せた。
「うるさいな。いいから黙って使ってろよ。死にはしなくても、寒いものは寒いだろ」
ゼンだって寒いものは寒いだろうに、と思ってエルは口をとがらせたが、
ゼンがそのまま背を向けて寝転がってしまったので、エルは礼を言って、おとなしくマントにくるまった。
ついさっきまでゼンが羽織っていたマントは、ほんのり暖かく、
その温度に堪えていた眠気が誘われて、エルは目を閉じるとすぐに眠りに落ちた。