ラスト・ジョーカー

*第二章 世界の形 3*



 目を閉じて開けるともう朝だった。



 エルは肩までずれかかっていたマントを羽織りなおして、むくりと起きあがる。


あまり眠った気はしないが、冬の朝の冷気のせいで、目は冴えていた。



 まだ夜は明けきっていないようで、森の中は仄暗い。


すこし離れたところで横になっているゼンは、まだ眠っているようだ。ぴくりとも動かない。



 なんとなく顔を上げると、薄明かりの射す枝々の隙間から、見覚えのあるものが見えた。



 それは昨日の昼、ウォルターの車の中で見た空を覆う膜だ。


水を張ったようにも、空気を集めてきたようにも見える、透明の膜。



 そのとき唐突に思い出したのは、ゼンが昨夜話していた、〈境界〉の話だ。



(エリア全体を覆う、PKで作られた結界……)


 あれが、結界。


「へんなの」



 知らず知らずのうちに、エルは呟いていた。


 すると、ゼンが小さく唸って身じろぎをした。



「あ、ゼン、おはよう」



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