ラスト・ジョーカー
第三章 銀の鈴

*第三章 銀の鈴 1*


 カチャ、という小さな音にスメラギが顔を上げると、目の前に琥珀色のお茶で満たされたティーカップが置いてあった。



 アイボリーとフォレストグリーンを基調に百合の花をかたどったそのカップは、以前スメラギの部下が英国へ旅行に行ったときに、土産に買ってきたものだ。



「お砂糖とミルクはどうなさいますか?」



 スメラギの隣に立った女が、小首を傾げてそう尋ねた。


左胸にかかった栗色の髪がはらりと落ちて、「サザナ・芽利加(メリカ)」と表記されたネームプレートが露わになる。



「いや、いらない」



 そう答えて、スメラギはカップを手に取った。紅茶の香りがふわりと漂う。



 芽利加は一歩下がると、長いまつげに縁取られた大きな眼を細めて、クスリと笑った。



「お一人で局長室にこもって考え事もよろしいですが、たまにはわたしにも相談してくださいね?

でないと、副局長は仕事を怠けていると部下たちに思われてしまいます」



そうだな、すまない。と、スメラギは頷いた。


そして、「明日の予定は?」と、芽利加に問う。



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