ラスト・ジョーカー
それを訊いて、スメラギは「なるほどな」と呟いた。
おそらく、以前スメラギが〈ユウナギ〉の見世物小屋に赴いたときに、その「少年」に盗まれたのだろう。
異形をさらうときにそれを落としたのが、わざとなのかそうでないのかはわからないが。
「ということは、芽利加、ウォルターは目を覚ましたんだな」
ふと思い立って、スメラギは尋ねた。
異形の移送中に事故に遭った部下は、〈トランプ〉に搬送されたときは昏睡状態だったと、スメラギは聞いていた。
「はい、つい先ほど目を覚ましました。明日のAとの約束は午前中ですので、午後から様子を見に行かれてはどうです?」
「そうしよう」
スメラギは頷いた。
そして、「ではわたしはこれで」と言って局長室を去ろうとする芽利加を呼び止めて、彼女に一枚の封筒を渡した。
「これをジャックのうちの誰か一人にわたしてくれ。誰でもいい。その中身を読んで、おまえがその任務内容に適任だと思う者を選んでくれ」