ラスト・ジョーカー
「たしかに承りました。では、失礼します。
……局長、『お茶会』がお嫌いなのはわかりますが、明日までにはその眉間のしわを消しておいてくださいね?」
クスリと笑って、芽利加は部屋を出ていった。
それを見届け、スメラギはふう、と息をつく。
芽利加に渡した封筒には、ジャックへの新しい任務が記してある。
ジャックが書面の通りに任務を遂行すれば、先日取り逃がした「異形の歌姫」が、近いうちに手に入る。
そうすれば、もうすぐだ。
もうすぐ、「秘術」に手が届く。
「あと少し、待っていてください、母さん」
無駄にだだっ広い部屋に、スメラギの低い声が地を這うように響く。
「もうすぐ、あなたを殺してさしあげますから」