ラスト・ジョーカー




「あの葉の表面は、強力な消化酵素を含んだ粘液でドロドロのネチャネチャだ。

一度粘液に触れれば、とたんにその部位が溶かされる。だから、口の中に突っ込むのは得策じゃないな」



「PKでなんとかならないの?」



「たとえばPKであの目玉をぶった切れるやつもいるが、おれの力はそこまで強くない。せいぜいが結界を張ったり、ものをちょっと動かす程度だ。

ものを……とくに生き物を傷つけるってのは、けっこう強い力が必要なんだ」



「そんなの……」エルは困りきってゼンを見た。

「どうしようもないじゃない」



 そう話している間にも、砂漠ハエジゴクは次々と蔓を伸ばして、エルとゼンを捕らえようとする。


ゼンはそれをPKで逐一はじき返していた。




「大丈夫だ、あいつは朝日に弱い。日が昇れば砂の中に引っ込む」



「その間、ずっとそうやってPKで凌ぐの? 体力がもたないんじゃない?」



「多少疲れはするが、問題ない。〈ユウナギ〉に来る前だって、こうやって凌いだんだ」



 そう言うゼンの息が上がっていることを、エルは見逃さなかった。



「ぜんぜん問題なくないじゃない!」



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