ラスト・ジョーカー
ハエジゴクはずんずんと地中に潜っていき、やがてエルの入った捕虫器だけを残して止まり、
それからはすこし潜ってはまた地上に出て、潜っては出てを繰り返した。
エルという敵を一緒に地中に連れていくべきか迷っているのだろう。
エルはハエジゴクの葉の中を移動し、目玉の前まで来る。
よく見ると目玉は後方から茎が伸びていて、それが二枚の葉の連結部分につながっていた。
エルは目玉にそっと手を触れた。その手のひらが粘液に触れて溶ける。
「ごめんね」
と、一つ呟いて、エルはいきなり目玉を押さえつけると、その後ろに伸びる茎を、ゼンの短刀で断ち切った。
まるで血を流すように、茎からは紫と緑の混ざったような不気味な色の液体が流れだす。
エルはそれに触れないように、すこし離れてから、目玉を足元に置いた。
目玉がぎょろりとエルを見る。
エルはそれめがけて右脚を振り下ろした。