ラスト・ジョーカー
ぐちゃ、と、嫌な音がして、足元のものが潰れていく感触がした。
心臓を失ったハエジゴクが、生命を失ってみるみる傾いでいくのがわかる。
エルはすぐにハエジゴクの口から出て、砂の上に飛び降りた。
念のため粘液を浴びた体をチェックするが、どこにも異常はない。
どうやら粘液よりもエルの再生力のほうが強力だったようだ。
ふいに足音が聞こえて、エルが振り返ると、ゼンが駆け寄ってくるところだった。
ふう、と一つ息をつき、エルもゼンのほうへ歩き出す。
が、いくらも進まないうちに、なにかにつまずいてころんだ。
「おい、大丈夫かよ」
「うん、だいじょう……」
言いかけて、エルはぎょっとして言葉を失った。
足下に人が落ちていたのだ。
死んだ砂漠ハエジゴクの蔓にぐるぐるに巻きつかれたまま、気を失っているのだろうか、目を開けない。
整った顔立ちと瑠璃色の髪が目を引く、若い男だ。
「ちょっ、えっと、だ、大丈夫ですか!?」
エルな慌てて男のそばにかがみこみ、その肩を揺さぶった。
ゼンもしゃがんで、脈を取ろうと男の腕をつかむ。
――そのとき、男が唐突に目を開けた。
「わっ」